多国籍軍、リビアに武力介入
日本国内ではテレビや新聞などの報道が東日本大震災と福島原発の動向に注目が集まるが、一方で米英仏を中心とする多国籍軍が、19日からリビアに対する軍事介入を開始した。米国防総省によると、今回の軍事作戦名は「オデッセイの夜明け」と付けられた。国連安全保障理事会が決議したリビア上空の飛行禁止空域の確保に向けて、カダフィ政権の防空網を破壊することが狙いである。今後はリビア政府軍による反体制派攻撃の拡大を食い止めることが求められている。米英仏は軍事介入に先立って、アラブ連盟や国連、欧州連合(EU)などとの緊急国際会議をパリで開催し、軍事介入への最終的な意思を確認している。
リビアの最高指導者カダフィ大佐は20日に国営テレビを通じて演説し、国民に対しゲリラ戦による徹底抗戦を呼びかけている。さらにカダフィ氏は「これはイスラムに対する新たな十字軍だ。イスラムを打ち破ることはできない」と述べた。これは、イスラム教・アラブとキリスト教・欧米の対立構図を持ち出すことで、イスラム・アラブ世界からの支持を獲得する狙いがあるようだ。
今回の武力行使の背景では、リビア問題で17日に採択された安保理決議で、「国連憲章7章(以下説明あり)」を発動し、政府軍の空爆から市民を守るため地上軍の侵攻を除く必要なすべての措置をとることを加盟国に認め、具体的には飛行禁止空域を順守させる措置を講じると、国連が加盟国に権限を与えている。
飛行禁止空域の狙いは、リビア政府軍機が飛行できない空域を設け、政府軍の空爆から市民を守ること。安全保障理事会決議は、特定国に実施を要請したわけではないが、今回は米英仏を中心とする多国籍軍が作戦立案を担った。オバマ米大統領もアフガニスタン、イラクに続く軍事行動に理解を求めている。ただ、飛行禁止空域の履行を目指す軍事行動が、カダフィ政権の武力弾圧阻止に効果があるのか疑念がある。また反体制派は多国籍軍の行動を歓迎しているが、反米感情が根強いアラブ地域での軍事介入は泥沼化する危険性がある。かつての湾岸戦争やイラク戦争の開戦時がそうであったように、中東地域における軍事介入では、有事のドル買いではなく、有事のドル売りに反応する。今回は急激な円高の後、円売り協調介入の実施があり市場が膠着している時の軍事介入であったため、小幅にドル売りに反応している。過去の実績を見てみるとドルの上昇局面は、終戦前後と言うことになる。どちらにしても第2のイラクにならないよう国際社会が見守る必要がある。
※国連憲章7章は安全保障理事会が平和への脅威や平和の破壊、侵略行為を認めた場合、武力行使を含む強制措置をとることができると定めてある。
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それでは次は中東問題を捉えた今後の相場展開についてです。
今後の相場展開は?
中東・北アフリカ情勢や日本の原発事故は依然として予断を許さない状況ではあるが、事態が膠着していることから、投資家の注目度が徐々に変化している。
特に注目されたのが、欧州中央銀行(ECB)の利上げ観測とユーロ圏の財政状況である。ECBのトリシェ総裁は、日本の震災がECBのインフレ警戒姿勢に影響していないことを示唆したことで、ECBの4 月利上げ期待は一層高まりユーロ買いに繋がった。
一方でソブリン危機が再燃している。アライド・アイリッシュ銀行の債務の支払いが遅れるとの噂等から欧州周辺国の財政問題に対する懸念が高まり、周辺国の対独スプレッドが拡大した(実際には支払いは完了している)。また格付け会社ムーディーズによるスペインの銀行30行の格下げと、格付け会社フィッチやS&Pによるポルトガル長期格付けの引き下げ。さらにEUサミットに先立ち、欧州金融安定化基金(EFSF)の実質的貸出限度額を2,500億ユーロから4,400億ユーロに拡大する案が話し合われたが、今回のEUサミットではなく6月末までに先送された。ポルトガルでは政局が混迷、ソクラテス政権が提案した緊縮予算案に対する反対動議が可決し、首相は辞任した。ポルトガルは4月と6月に大規模な国債償還を控え、現在の金利水準に鑑みると支援融資金利の方が低く、EUや国際通貨基金(IMF)に対する支援要請の可能性が高まっている。もっともポルトガルの財政支援問題に関し、ギリシャの時と違い債務不履行に陥る可能性が低いことや、救済額がギリシャやアイルランドよりも小規模になると思われること、ポルトガルの支援要請は既に織り込まれていることが、大幅なユーロ売りではなく、一時的で小規模なユーロ売りに限定されると思われる。それでも深刻なソブリン危機再燃で市場が大荒れとなる場合は、ECB は利上げを先送りせざるをえなくなり、ユーロ売りに拍車がかかるだろう。
米英仏を中心とした多国籍軍のリビア攻撃など情勢の混迷が続く中、一旦下落していた原油価格が上昇に転じている。金価格も終値ベースで過去最高水準となった。多国籍軍によるリビア攻撃で同国からの供給停滞が長期化するとの懸念や、中東の政治的混乱が一段と進み原油輸出が減るとの観測が広がったことが材料視された。原油価格の上昇は米ドルの売り材料となるため今後も見極めることが必要である。ただ今週のドル円相場では、福島原発問題などリスク回避の円買いと協調介入観測で動きづらかった。事態が急変しない限り来週も同様の相場展開が予想され、80円台半ばから81台半ばでの小幅な値動きの可能性がある。
英国では2月の消費者物価指数(CPI)が発表され前年比で1月の4.0%から4.4%に市場予想を上回り約2年ぶりの高水準に達した。コア指数でも3.0%から3.4%に上昇した。2月のインフレ率の高さと原油価格の上昇圧力の強さを考慮すれば、イングランド銀行金融政策委(MPC)はインフレ警戒を強めざるをえず、早期の利上げ観測が浮上する。ただ公表されたMPC議事要旨(9-10日分)で、政策金利の引き上げを主張する委員の数が前回同様となったことから、一旦英ポンド売りが加速した。ただ市場ではインフレ率の高さからBOEが5月にも利上げをすると見込んで英ポンドを支えているが、デール英MPC委員の「英経済の回復がさらに弱いものであれば、利上げスタンスを再考慮するだろう」との発言や、2月の小売売上高が予想を下回ったことなどで利上げ観測は一旦後退している。今後の金利動向は英経済指標の結果やMPCメンバーの発言を睨みながらの判断となろう。